私が落札したこの物件の建物は、平成4年築のパナホームだった。
平成4年といえば、私が平成5年に木下工務店へ入社して、サラリーマン人生をスタートさせる、まさにその少し前である。
そう考えると、この家はちょうど私が新入社員だった頃の建物ということになる。
それだけで、なんとなく妙な愛着が湧いた。
しかも、当時の私の上司はパナホーム出身の人だった。
だから、
「あの人も、パナホーム時代にはこういう家を売っていたのかな」
などと、そんなことまで想像していた。
さすが天下のパナホームだけあって、建物全体としては大きな不具合は少なかった。
ただ、一番大きなダメージが出ていたのが、実はバルコニーだった。
バルコニーというのは、見た目には華やかだし、一般のお客さんも大きなものを欲しがる。
けれど、建物の側から見ると、実はかなり厄介な存在だ。
建物本体から外へ張り出していて、雨をまともに受ける。
つまり、家の中でも特に傷みやすい場所なのである。
だから、防水工事がとても重要になる。
逆に言えば、防水を甘く見ると、後で痛い目を見る場所でもある。
このパナホームの家も、外から見ると、バルコニーの一部の壁に穴が開いていた。
最初は気づかなかった。
ある日、作業中にふと見上げたときに、
「あれ、穴が開いてるじゃないか」
と気づいたのである。

大きさは10センチ四方くらいだっただろうか。
しかも、穴が開いていたのはバルコニーの横っ腹だった。
だからなおさら不思議だった。
「なんで、あんなところに穴が開くんだ?」
そう思って、その日、バルコニーの床に上がり、床材を剥がしてみた。
実は、床自体もすでに雨でかなり傷んでいて、ところどころベコベコしていた。
だから、いずれにしても中を確認しないわけにはいかなかったのである。
そして剥がしてみて、少し驚いた。
バルコニーを支えている根太があるのだが、それが全部金属というわけではなかった。
一部は金属製なのに、一部は木で組まれていたのである。
そして、その木の部分が腐っていた。
さらによく見ると、雨水が流れる通り道があり、その問題の壁はちょうどその途中にあった。
おそらく長い年月をかけて、雨水が少しずつその部分を傷め続け、木部を腐らせ、最後には壁に穴が開くところまでいってしまったのだろう。
そこまでわかって、私は少し青くなった。
というのも、その時点まで、私は何も考えずにそのバルコニーの床の上に立って作業していたからである。
後から考えると、かなり怖い。
何しろ、腐った根太の上に自分の体重を預けていたわけだからだ。
もし踏み抜いていたら、笑い話では済まなかった。
そこで私は、傷んでいた根太を電動丸ノコで途中から切り、新しい木材で継ぎ足した。
さらに念のため、金属製の梁も追加して補強した。
その上で、床材も新しいものに交換した。
表面の仕上げ材も、もともとは古びたゴムのようなものが貼られていたのだが、すでに劣化していたので、全部剥がして捨てた。
そして最後に、人工芝を貼った。
これが思った以上によかった。
ずいぶん見栄えも良くなったし、印象も明るくなった。
いかにも“くたびれた古いバルコニー”だった場所が、ちゃんと使いたくなる空間に変わったのである。
出来上がったあと、私はその人工芝の上にちょっと転がってみた。
そのまま、少し昼寝までしてしまった。
これがまた気持ちよかった。
ついさっきまで、腐った根太の上でヒヤヒヤしていた場所とは思えない。
人間、直したばかりの場所というのは、妙にうれしくなるものだ。
もっとも、その作業中に、前の第19話で書いた、あの酔っ払いのおじさんの怪しい動きまで目撃することになりますが、その話は第19話を読んでください。
【第四部 内装・再生の美学編(21話から26話)】
「第21話 貧乏臭いグレーとの決別 外壁塗装で家が呼吸を始めた」
へ続く。


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