駐車場を作るためには、まず道路を塞いでいるブロック塀を撤去しなければならない。
私はこの作業を、正直なところ軽く考えていた。
高校時代、私は空手に打ち込んでいた。
当時は演武でコンクリートブロックをかかと蹴りで割ることなど朝飯前だったのだ。
「ブロック塀なんて、所詮は砂とセメントの塊。
大したことはない」 そんな根拠のない自信が、私の胸の中にはあった。
YouTubeという名の「幻想」
念のため、YouTubeで「塀の壊し方」を予習してみた。
そこには、ごく普通の女の子二人組が、ホームセンターで買った大きなハンマーでガンガン塀を殴り、面白いくらいに壊していく映像が流れていた。
彼女たちは決して女子プロレスラーのような体格ではない。
「……これ、楽勝だな」私は確信し、現場近くのホームセンターへ向かった。
迷わず、棚にある中で一番デカい、柄の長さが1メートルもある大ハンマー(かけや)を買い求めた。

「大谷翔平」にはなれなかった
現場に戻り、まずは塀の上についているアルミ製の柵をドライバーで外した。
これは面白いように簡単に取れた。
「さあ、ここからが本番だ」私は右打席に立つ大谷翔平選手ばりのフルスイングで、ハンマーを振り抜いた。
ターゲットは、目の前のブロック塀。
「バイィィィン!!」凄まじい衝撃音とともに、私の腕を襲ったのは、殴りつけたのと同等のすさまじい反発エネルギーだった。
「えっ?」
一瞬、思考が停止した。
何が起きたのかわからなかった。
YouTubeの女の子たちは、もっと「ボコッ」と快音を立てて壊していたはずだ。
打ち所が悪かったのかと思い、もう一度、渾身の力で振り抜く。
「バイィィィィィン!!!」
結果は同じ。ハンマーは無情にも跳ね返され、ブロックの角がわずかに欠ける程度。
私の落札した家の塀は、普通の灰色のブロックではなく、「リブロック」と呼ばれる縦に筋の入った化粧ブロックだった。
どうやらこいつは、私のかかと蹴りの記憶にあるブロックとは、強度の次元が違っていたらしい。
20回のフルスイングと、静寂
その後も、意地になって20回ほど叩きつけてみた。
しかし、壊れるのは塀ではなく、私の腕の筋肉と、近隣に響き渡る爆音に耐えきれなくなった私の心の方だった。
「これ、近所迷惑どころの話じゃないな……」ゼェゼェと肩で息をしながら、私はその場に座り込んだ。
1メートル、数キロの鉄塊をフルスイングし続けても、びくともしないリブロックの壁。
YouTubeのあの映像は、一体何だったのか。
あれは「ヤラセ」だったのか、それともこの家が特別に頑丈なのか。
このままでは、駐車場どころか、塀の一枚すら剥がせない。
私は重いハンマーを引きずりながら、その日はすごすごと撤退することにした。
「筋肉」と「根性」だけでは、八街のパナホームは落とせない。
私はもっと別の、「文明の利器」が必要であることを痛いほど思い知らされていた。
(第10話へ続く:15,000円のハツリ機。文明の利器と、止まらない爆音)
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