【八街再生ストーリー 第1話】 350万円の落札。それは地獄への招待状だった

八街再生ストーリー

「おめでとうございます、落札です!」

コンサルタントの声が電話越しに弾んだ。

初めての競売入札。

予算の都合で選んだ、

千葉県八街市のパナホーム。

平成4年築、延床面積130平米。

軽量鉄骨の立派な家だ。

売り出し価格約250万円に対し、

私の入札額は350万円。

「初入札でいきなり落札なんて、

ありえないですよ!」

プロであるはずのコンサルタントも

驚くほどのビギナーズラック。

当時の私は、ハウスメーカー出身

としての自負もあり、

「この家を直して売れば、勝てる」

と確信していた。

実は、入札前に一度、現地へ

下見に訪れている。

そこで私は、忘れられない光景を

目にしていた。

誰もいないはずのその家で、

元の所有者であろう母娘が、

静かに荷物を運び出していたのだ。

もちろん、私がその家を狙っていること

など彼女たちは知らないし、

私の存在にも気づいていなかっただろう。

淡々と荷物をまとめる二人の背中を見て、

私は何とも言えない感情に襲われた。

競売という仕組みの裏にある、

生活の破綻と、住み慣れた家を

追われる者の悲しみ。

不動産という「資産」を動かすことの重みが、

ずしりと胸に響いた瞬間だった。

敷地には、2階の屋根を越えるほど

巨大な銀杏の木がそびえ立っていた。

その時はまだ「立派な木があるな」

程度にしか思っておらず、

後にこのボスと死闘を繰り広げることに

なるとは夢にも思っていなかった。

「この家を、もう一度輝かせよう」

そんな淡い期待とともに落札した物件。

しかし、鍵を手に入れ、いざ

「自分の持ち物」として中に入った瞬間、

私は隠されていた過酷な

現実に直面することになる。

(第2話へ続く。)

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