【第26話】エアコン設置の怪。あわや爆発!?素人DIYの限界点と1年半の完結

八街再生ストーリー

八街の家を再生し始めて驚いたのは、その過酷な気候でした。
内陸的な気候のせいか、夏は文字通り「酷暑」。
そして冬は、パナホームの家でありながら外気温と変わらないほど冷え込みます。
家の中で吐く息が白く、寝る時は顔が冷たすぎて布団を頭から被らないと眠れない。
坊ちゃん育ちの私には(笑)、この寒さは耐え難いものでした。

💰 ヤフオクで見つけた「10年落ちの高級機」

「まずはエアコンだ」とホームセンターへ走りましたが、新品は高い!
一番安い機種でも工事費込みで8万円、リビング用なら30万円は下りません。
そこで再びヤフオクの出番です。狙ったのは「10年落ちの上位機種」。
当時は高嶺の花だったハイスペック機が、3万円程度で手に入ります。
これを3台落札し、戦場(現場)へと運び込みました。

💣 「爆発」の恐怖!物陰に隠れてのポンプダウン

エアコン取り付けも、師匠はYouTubeです。
しかし、そこには恐ろしい警告が並んでいました。
「ポンプダウン(冷媒ガスの回収)を間違えると、室外機が爆発する」
「こんなところで死ぬわけにはいかない……」 私はYouTubeを穴が空くほど見返し、手順を確認しました。
作業中、もし爆発しても被害を最小限にしようと、壁の物陰に半身を隠しながらバルブを回しました。
今思えば、体半分は露出しているのだから意味はないのですが、それほど必死だったのです。

🛠️ 重力との戦いと「魔法の液体」ナイログ

一人作業で一番辛いのは、重い室内機を天井近くの高さまで持ち上げ、固定する瞬間です。
落としたら即、数万円がパー。
まさに「よいしょ!」の掛け声とともに、気合でねじ込みました。

さらに、プロの道具の重要性も知りました。
最初、接続部からガスが漏れてうまく効かなかったのですが、調べるとプロは「ナイログ」という密閉剤を使っていることが判明。
Amazonで取り寄せて塗ってみると、あんなに苦戦していたのが嘘のようにピタッと密閉されたのです。

🤖 喋る「霧ヶ峰」に震えた完成の瞬間

特に感動したのは、リビングに設置した三菱の「霧ヶ峰」です。
スイッチを入れると、ロボットのようにパネルがウィーンと開き、エアコンが喋り始めました。

「電気代は8円でした」 その声を聞いた時、1年半の苦労が報われた気がしました。
オーバースペックな大型機を選んだおかげで、部屋はあっという間に快適な温度に。もっと早くやっておけばよかった、と後悔するほどの効き目でした。

📝 【追加エピソード】DIYエアコン工事の「隠し技」:10万円の道具を2,000円で使う方法

ここで、DIYでエアコン設置に挑もうとする勇者たちに、非常に重要なアドバイスをしておきましょう。

エアコン設置において、絶対に避けて通れないのが「真空引き」という作業です。 配管の中にある空気や水分を抜き取り、真空状態にする工程ですが、これには「真空ポンプ」や「ゲージマニホールド」といった専門的な道具が不可欠です。

まともに揃えれば10万円近くするプロの道具。一度きりのDIYのために買うにはあまりに高額です。しかし、ここで諦めてはいけません。

私は「ヤフオク」をフル活用しました。 実はヤフオクでは、これらの工具一式を「2,000円程度でレンタル」させてくれる出品者がいるのです。数日間借りて、作業が終われば送り返すだけ。

「道具は買うもの」という固定観念を捨てれば、コストは劇的に抑えられます。 ただし、道具はプロ仕様。使いこなすにはYouTubeでの予習と、何より「慎重さ」が必要です。私はこのレンタル工具を手に、爆発の恐怖と戦いながら、一台一台魂を込めて真空を引いていきました。

秘密の二重生活

この1年半、私はある種の「二重生活」を送っていました。平日は三井ホームの社員、休日は八街で泥にまみれる肉体労働。
正直、現場の作業は普段のデスクワークより何倍も過酷です。
でも、これは「会社を辞めて独立する」ための壮大な実験。
誰にも言えるはずがありません。

エアコンの爆発より冷や汗? 10歳年下上司との「1on1」という地獄

そんな折、会社で「ワンオンワン(1on1)」という制度が始まりました。
その相手である上司は、私よりも10歳以上年下。

💡 【補足】そもそも「ワンオンワン(1on1)」って何?

ここで少し、最近の企業で流行っている「ワンオンワン」について解説しておきましょう。

簡単に言えば、「上司と部下が、定期的に1対1で対話する時間」のことです。
これまでの「進捗報告」や「業務連絡」のためのミーティングとは違い、目的はあくまで「部下の成長やキャリアについて話すこと」

その最大の特徴であり、私のような「秘密」を抱えた人間にとっての地獄のルールは、次の2点です。

  • 「部下(私)」が主役: 上司が指示を出すのではなく、部下からやりたいことや悩みを話さなければならない。
  • 「業務以外」を話す: キャリアプランや個人的な想いなど、いわゆる「内面」の話を求められる。

つまり、「君は本当は何を考えているんだい?」と、心の中を覗き込まれるような時間なのです。 10歳以上年下の「やり手の上司」を前に、頭の中が「八街の爆発の恐怖」でいっぱいのベテラン社員が、一体何を語ればいいのか……。
そのカオスな状況、想像していただけるでしょうか。

私の32年のキャリアを前に、彼は彼なりに気を遣いながら、会社から言われた通りに聞いてくるわけです。
「澤井さん、今後のキャリアについて、何か考えていることはありますか?」

私(心の声):(……昨日、天井の壁紙が全部剥がれ落ちて絶望しました。今は来週行うエアコン入れ替え工事の時に爆発しないか心配でたまりません。あと、近いうちに会社を辞めるつもりです)

私(実際の声):「……いえ、特に。今の業務を精一杯頑張ります」

私の生活の95%は、すでに「八街の再生」に占拠されていました。
それを抜かしたら、話すネタなんて何一つ残っていない(釣りや私生活の雑談ならいくらでもできますが・・・)。
10歳以上年下の彼に、自分の情熱や、ましてや「もうすぐ辞める」なんて言えるはずもない。
不審がられ、どんどん質問されるあの時間は、エアコンの爆発以上に冷や汗ものでした。

🏁 1年半のゴール。達成感という名のご褒美

毎週の定休日に片道2時間をかけて通い続け、気づけば1年半。
途中で仕事の部署異動があり、連休が取れなくなるというハプニングもありました。
それまでの部署は火水が定休日でしたが、新部署は水曜と日曜に定休日が分割されていました。
連休だと現場に1泊して作業していましたが、1日休みだと、移動だけで時間が削られ、作業時間はわずか。
これが地味にきつかったです。
それでも、一歩ずつ、自分の手で家を蘇らせてきました。

プロの仕上がりには到底及びません。
よく見れば壁紙は曲がっているし、塗装に斑(むら)もあるでしょう。
でも、誰も見向きもしなかった「廃墟同然の家」が、今こうして息を吹き返し、快適な住まいとして完成した。

その屋根の上から見た夕暮れの景色と、キンキンに冷えた(あるいは温まった)部屋の心地よさ。 あの凄まじい達成感は、私の32年のキャリアの中でも、間違いなく特別な宝物になりました。

第五部「売却編」第27話に続く

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