第5話:絶望の発見。道が・・・、水が・・・、そしてそびえ立つ銀杏

八街再生ストーリー

家の中を確認し、私は外に出た。

「水道メーターは何ミリかな?」 リフォームを考える上で、水道メーターを確認するのはプロとして基本の作業だ。

配管の経路、メーター口径はリフォーム内容に影響を与える。

しかし、庭のどこを探しても、あの青い蓋が見当たらない。

代わりに目に入ったのは、隣の敷地の中、私の落札物件から1.5メートルほどの距離に置かれた、40センチ四方ほどの古びた白いプラスチック箱だった。

何の箱?

試しに外水栓をひねってみる。

水は普通に出る。だが、その瞬間、白い箱の中から「ウィーン……」と

かすかな機械音が響いた。

蛇口を止めると、音も止まる。

「……まさか、これ、井戸なのか?」渋谷区生まれでヒップホップ育ち、社会人になってからは埼玉、千葉、そして東京の下町。

都市部でハウスメーカーの営業をしてきた私にとって、井戸は縁のないものだった。

焦って入札時の書類をひっくり返すと、そこには確かに「井戸」の二文字が。

「あのコンサル、いい物件だって言ってたじゃないか……」 うさん臭いと思っていたはずなのに、どこかで彼を信じ、チェックを怠った自分に猛烈に腹が立った。

プロを自称しながら、こんな初歩的なインフラを見落としていたなんて。

情けなくて、八街の空を見上げた。

言い訳をすれば、休日に行っていたこの事業。

どこかでスイッチがオフに

なっていたのかも知れない。

道路という名の「罠」

さらに、追い打ちをかける事実が判明する。

目の前の道路は、舗装もされていない土の道。

側溝があるべき場所は完全に土で埋まり、機能していない。

何より衝撃だったのは、道路の所有権だ。

この道は「位置指定道路」として分筆されていたが、私の落札した土地の目の前にある道路部分だけが、競売の対象から外れていたのだ。
おそらく抵当権が設定されていなかったのだろう。

つまり、「土地は俺のものだが、目の前の道は元の所有者のもの」

という歪な状態。 水も、道も、私の手の中にはなかった。

私はつぶやいた「だから350万で落札できたのか・・・」

隣のおじさんと、銀杏の密約

立ち尽くす私の元に、一人の男性が近づいてきた。

道路向かいに住む、元電機メーカー勤務のサラリーマンだったというおじさんだ。

見た目には60代後半に見える。

高度成長期からバブルにかけて日本を支えてきた元企業戦士だと思われた。

日曜大工が趣味だという彼は、自分が行った外壁塗り替えの話を楽しそうに話してくれた。

そして、新しい所有者になった私に興味津々の様子だった。

「実はね……」 おじさんは庭にそびえ立つ巨大な銀杏の木を指差した。

「この木、ずっと困ってたんだよ。

風が吹くと枝が電線に当たって危なくてね。

前の持ち主には何度も言ったんだけど、なしのつぶてでさ。

……あんた、これ切ってくれるんだろ?」このおじさんが言うには、元々の

所有者は自然信仰的な考えが強く、植栽が好きだったとのこと。

確かに46坪程度の敷地内にはこの銀杏の巨木以外に2メートルくらいの高さの木が10本程度生えていた。

私は木のことなど二の次だったが、これからここで作業をする以上、近隣住人と揉めるわけにはいかない。
「わかりました。なんとかしますよ」 つい、そう答えてしまった。

水は隣のポンプ頼み。道路の権利は他人。

そして、隣人からは巨大な銀杏の伐採依頼。

八街の風に揺れる銀杏の葉が、まるで「さて、どうするんだ?」と私を試しているように見えた。

(第6話へ続く:1万円のチェーンソー vs 銀杏のボス。死闘の幕開け)

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