【第28話】中国から来た救世主。言葉の壁を越えた「不動産の妙」

八街再生ストーリー

ある日、仲介担当の営業マンから一本の電話が入りました。
「案内のアポが入りました。ただ、買い主様は中国籍の方ですが、澤井さんは抵抗ありますか?」

「全くありませんよ。どうぞ案内してください」 私は即答しました。
買ってくれるなら誰だっていい。
それが正直な気持ちでした。

💰 765万円という「絶妙な数字」の裏側

案内の日の夜、すぐに「買い付け(購入希望)」の連絡が。
提示された金額は765万円
満額(790万)からは少し指値が入りましたが、この中途半端な数字には理由がありました。

後で知ったのですが、当時、中国から国外へ出金できる上限額に「800万円」という壁があったようです。
800万円(予算)ー 仲介手数料(約30万強) ≒ 765万円 なるほど、買い主さんにとってはこれが「全力の回答」だったのです。
契約書類はなんと「郵送」。
32年のプロ生活で初の経験でしたが、この価格帯ならではのスピード感なのかもしれません。

🚽 「設備がいい」という意外な評価

契約後、浄化槽の清掃立ち会いで初めて買い主さんと対面しました。
非常に礼儀正しいその方に、私は直球で聞いてみました。
「なぜ、この家を買ったんですか?」返ってきた答えは、私にとって少し意外なものでした。
「設備がいいですね。特にウォシュレットとエアコンが最高です」
私からすれば、リフォームの「おまけ」程度に考えていた部分です。
しかし、ウォシュレットは1階・2階の両方に最新型を入れ、部屋の広さに対してオーバースペックなエアコン(10年落ちだからヤフオクで1台3万程度、あの爆発の恐怖を乗り越えて付けたやつです)を設置したことが、強烈なアピールポイントになっていたのです。
さらに、IKEAで揃えた照明器具などのインテリア。
自分なりにコーディネートした「おしゃれな雰囲気」も、しっかり彼の心に届いていました。
また、外壁の色も気に入っているとのことでした。
狙ったわけではありませんが、中国の人は黄色(外壁はクリームイエローでしたが)が好きですね。
中国では黄色は長く皇帝・権威・中心を連想させる色で、故宮でも黄色い瓦が皇室の象徴として使われていたし、清代の宮廷服でも明るい黄色は皇帝に結びつく特別な色だったようです。

✈️ 八街の弱点が「強み」に変わる瞬間

さらに驚いたのは、立地の評価です。
「ここは成田空港に近いから、とても便利です」正直、八街を「不便な田舎」だと思い込んでいた私には盲点でした。
しかし、海外を行き来する彼らにとって、成田へのアクセスの良さは絶対的な価値だったのです。そして、私が一番心配していた「夏は暑く、冬は息が白い」という断熱性能の低さや、春の凄まじい砂嵐についても伝えてみました。
すると、彼は笑ってこう言いました。
「全然、甘いです。中国の自然に比べたら、こんなの全く問題ありません」
これには太刀打ちできませんでした(笑)。
私の不安は、彼のタフな価値観の前で一瞬にして消え去ったのです。

🚲 三角形の駐車場が「完璧」だった理由

最後に、あの出来損ない(ミキサー車の運転手さんが手伝ってくれたあれです。)の「三角形の駐車場」。
軽自動車なら2台留められますが、普通車は1台が限界、というマイナスポイントも、彼は「車は持ちません。バイクを2台置くので、この形で完璧です」と一蹴。
不動産の仕事は奥が深い。
こちらが「欠点」だと思っていた場所が、ある人にとっては「利点」になる。
「買い主のニーズに合致すれば、弱点は消える」 その基本的な、しかし最も大切な真理を、私は八街の空の下で改めて教わったのでした。

第29話に続く

コメント

タイトルとURLをコピーしました